【2024年7月】Ketcherチュートリアル2
オープンソースの化学構造式描画ソフト「Ketcher」のチュートリアル第二弾です。
第一弾で一から手動で構造式を描く手順を示しましたが、分子量が大きいと一から描くのはちょっとうんざりします。しかも間違えやすいです。そこで、今回はInChIという表記を使って化学構造式を呼び出して描く方法をチュートリアルにしました。
InChIを利用して化学構造式を描く
既に構造がよく知られた物質であればPubChemにInChI表記が掲載されております。KetcherはInChI表記での構造読み込みに対応しているのでこれを利用して化学構造式を描けます。
今回は2020年に話題になったレムデシビルの化学構造式を描いてみましょう。
PubChemでレムデシビルを調べるとInChIが以下であることが分かります。
InChI=1S/C27H35N6O8P/c1-4-18(5-2)13-38-26(36)17(3)32-42(37,41-19-9-7-6-8-10-19)39-14-21-23(34)24(35)27(15-28,40-21)22-12-11-20-25(29)30-16-31-33(20)22/h6-12,16-18,21,23-24,34-35H,4-5,13-14H2,1-3H3,(H,32,37)(H2,29,30,31)/t17-,21+,23+,24+,27-,42-/m0/s1
InChIがわかればあとは以下の動画の手順で化学構造式を描くことができます。
手順
- Open Structureアイコンをクリック
- InChIを張り付ける(この際、InChI=から張り付ける)
- Add to Canvasボタンをクリック
- キャンバス内の好きな場所でクリックする
- Clean UPをクリックして構造を見やすくする
- Calculated Valuesをクリックして分子量が602.576(レムデシビルの分子量)であることを確認する
SMILESについて
KetcherではSMILESでも構造式を呼び出せます。しかしSMILESは非常に古いフォーマットのため不斉炭素は対応していません。また、不斉炭素に対応したisomeric SMILESというフォーマットもありますが、こちらはKetcherではエラーとなることもあるため、InChIが一番お勧めです。