OECDにおけるPFASの定義

2022年6月18日

今回は真面目な話です。フッ素化合物であるPFASの規制がヨーロッパやアメリカ合衆国で進められようとしています。EUではPFASの定義としてOECDの定義と同じものを採用しています。

そこで、OECDにおけるPFASの定義について解説します。

誰にでもPFASかどうかわかりやすくするための定義

OECDにおけるPFASの定義は以下の通りです。専門家でなくてもPFASかどうかを判別しやすくできるような定義にしたと書かれています。

PFASs are defined as fluorinated substances that contain at least one fully fluorinated methyl or methylene carbon atom (without any H/Cl/Br/I atom attached to it), i.e. with a few noted exceptions, any chemical with at least a perfluorinated methyl group (–CF3) or a perfluorinated methylene group (–CF2–) is a PFAS.

oecd.org

英語だとわかりにくい方もいると思いますので日本語にすると

「PFASは完全にフッ素化されたメチルあるいはメチレンを含む物質と定義される(フッ素が結合している炭素原子に水素や塩素・臭素・ヨウ素原子が結合していない)。つまりいくつかの例外を除き、PFASは-CF3基または-CF2-基を持つ。」

ちなみに「いくつかの例外」って何?と思われるかもしれませんが、これは「フッ素が結合している炭素原子に水素や塩素・臭素・ヨウ素原子が結合していない」という部分を指しています。notedの部分の意味が分かりにくいので誤解しがちですが、notedは言及したという意味の形容詞で使われていて、[without any H/Cl/Br/I atom attached to it]を指すと解釈できます。

OECDでPFASとなる物質の例

先ほど紹介した定義だけだとピンとこない方もいるのでOECDではPFASに該当するものを例示しています。その例示内容を紹介します。

例示物質1~5はわかりやすいと思います。いずれも-CF3基が存在する物質です。

例示物質6は-CF2-基が含まれている物質です。例示物質7と8は主鎖に-CF2-基が含まれているポリマーです。例示物質9は側鎖に-CF2-基や-CF3基が含まれるポリマーです。

OECDの定義でPFASに該当しない物質の例

例示物質a,bは不飽和炭素にフッ素原子が結合しているのでPFASに該当しません。例示物質cはフッ素が結合している炭素にハロゲン原子である塩素原子が結合しているためPFASに該当しません。例示物質dは-CF3, -CF2-のいずれも含まれないのでPFASに該当しません。例示物質eはフッ素が結合している炭素に水素原子が結合しているためPFASに該当しません。

例示物質Fはフッ素樹脂のポリフッ化ビニル(PVF)です。フッ素樹脂はほとんどがPFASに該当していますが、PVFはフッ素が結合している炭素に水素が結合しているため、OECDの定義ではPFASに該当しません。

具体的な製品イメージ

どういった製品がPFASに該当するのか一般消費者が使うような製品で具体例を挙げてみます。

  • フライパンのコーティングに使用されているPTFE
  • ファンデーションに添加されているフッ素化合物
  • 衣服につけるフッ素系防水スプレー

※当サイトはこれらの製品の危険性の有無について言及することが目的ではありません。あくまでOECDの定義するPFASに該当するかを述べています。

参考資料

※当サイトはOECDのガイダンス資料を解説していますが、個別の事象に関する法的な解釈は法務部門や弁護士と相談の上、決定することをお勧めします。当サイトでは一切の責任を負いません。

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Posted by Nao