プベルル酸

2024年3月31日

プベルル酸の化学構造式・物性などについて解説

プベルル酸という化学物質が話題になっていますね。そこでプベルル酸について解説します。

プベルル酸の化学構造式や性質

プベルル酸の化学構造式は以下のようになっています。7員環の芳香環にカルボキシル基1つ、OH基3つ、カルボニル基が一つついています。トロポロンという構造の誘導体という見方もできます。プベルル酸とは異なる構造のトロポロン誘導体はヒノキにも微量含まれることが知られています。

物性

物性は以下の通りです。

IUPAC名称:4,5,6-trihydroxy-3-oxocyclohepta-1,4,6-triene-1-carboxylic acid
分子量:198.130
沸点:206℃(1気圧)
屈折率:1.83

分析方法

微量分析でプベルル酸を分析する場合はGC-MSやLC-MSMSで分析するのが現実的でしょう。GC-MSではNISTのライブラリに登録されているので、比較的新しいGC-MSを所有していてライブラリを購入していれば定性分析自体はそこまで難易度が高くないでしょう。もちろん、異性体の可能性を排除するのは分析だけでは難しいですが、菌から生成する不純物という制約がある場合は異性体の可能性は排除できるのではないでしょうか。
完全に確定するには、日本の試薬会社では取り扱いがないため、海外の試薬会社から日本の商社経由で購入し標品を入手し、LC-MSMSやGC-MSで標品と同じ時間で検出できるかどうかで確定できると思います。ただ、その場合は標品入手で1か月程度かかる可能性が高いです。

NISTライブラリから予測される観測フラグメント

m/z=198と170が観測されるとされています。198は分子イオンで170は以下のフラグメントだと予想されます。

生合成

トロンポロン誘導体については真菌が作ることが知られており、研究も進められています。前駆体としては酢酸やマロン酸とメチオニンというアミノ酸から作られます。イギリスのブリストル大学のグループにより論文も発表されておりそれによると以下のルートで生成されると考えられています。下図でいうと右下に記載されている2の化合物がプベルル酸です。

DAVISON, Jack, et al. Genetic, molecular, and biochemical basis of fungal tropolone biosynthesis. Proceedings of the National Academy of Sciences, 2012, 109.20: 7642-7647.

参考資料

J-Global

Wikipedia

chemistryアオカビ

Posted by Nao