MOPACで予測したFT-IRと実測値との比較

別の記事でMOPACで低分子のFT-IRスペクトルを予測する方法を書きましたが、では実際にどの程度予測スペクトルと実測スペクトルが合うかを比較したいと思います。

お世辞にも予測精度が高いとは言えない

下図に予測スペクトルと実測スペクトルを示しましたが、一目瞭然ですが予測精度は低いです。期待されていた方はこんなレベルかとがっかりされることでしょう。

※NISTのスペクトルデータはSmith, A.L., The Coblentz Society Desk Book of Infrared Spectra in Carver, C.D., editor, The Coblentz Society Desk Book of Infrared Spectra, Second Edition, The Coblentz Society:Kirkwood, MO, 1982より引用されているそうです。

それで、計算科学系の人だと精度求めるなら非経験的手法がお勧めですとか言い出すのですが、じゃあ非経験的手法がそんなに精度いいかというと正直微妙だと個人的には思うわけです。

非経験的手法で計算したFT-IRスペクトル下に示しました。(論文"DFT Studies of Vibrational Frequencies of Aspirin, Paracetamol and Phenacetin, Int. J. Chem. Sci.: 13(1), 2015, 123-132″から引用)やはり実測スペクトルとはかなり違うスペクトルになっていると感じてしまいます。

DFT (B3LYP)/6-31G (d)レベルでの計算によるFT-IRスペクトル予測結果

MOPACでのスペクトル予測は帰属に役立つ

ここまで、FT-IRスペクトル予測と実測スペクトルとの差異が大きいというような話をしました。じゃあ何の役に立つのかというと疑問に思う方が多いと思うので、それについて述べます。スペクトルの差異が大きいとは言え指紋領域以外であれば予測スペクトルのピークと実測スペクトルのピークの対応はとれるレベルだとは思います。そして、MOPACで予測したスペクトルピークは完全にその振動による吸収か対応が取れています。ですので、実測スペクトルの吸収に対してこの構造のこの振動が原因の吸収ですと自信をもって答えられるというのがFT-IRスペクトル予測の利点かなと個人的に思っています。

chemistryFT-IR,MOPAC

Posted by Nao