耐溶剤手袋

耐溶剤手袋

2024年4月から労働安全衛生規則により健康障害のおそれがある化学物質を扱う労働者に化学物質との直接の接触を防ぐために適切な保護メガネ・保護衣・保護手袋を着用させる義務が規定されましたね。

そして、保護具着用管理責任者たるものが新たに設定されました。この保護具着用管理責任者になると有効な保護具を選定しなければなりません。そこで困るのが保護手袋です。大抵の有機溶剤は皮膚に障害を与えるおそれがあるので保護手袋は必須となるのですが、適切な手袋となると実は選択肢が少ないです。

耐溶剤手袋を選ぶ上の指標は?

そもそも普通のニトリル手袋とかラテックス手袋とかは溶剤に手袋が触れるのを前提で作られておらず、基本的に溶剤が付着したらすぐに浸透してしまう可能性があるのですぐに交換という感じになってしまいます。従って、溶剤に意図的に触れるような作業の場合はこのような普通の手袋では適切な保護具ではないとなってしまいます。

じゃあ、溶剤に意図的に触れるような作業で適切な保護具として保護手袋を選ぶときに何を参考に選べばいいのかという話になると思います。この指標としては「耐透過性試験」というものがあります。これはJIS T 8030:2015とかEN ISO 374とかEN 16523-1:2015といった規格がありますので、こういった規格に準拠したデータがある手袋で実際に使用する溶剤に近しい構造の溶剤にたいする透過時間がわかると適切な保護手袋かどうか判断できます。

具体例で考えてみると

例えばアズワンで販売している「耐薬・耐溶剤手袋 NEO NITRILE」で考えてみましょう。こちらはEN 16523-1:2015に基づいた溶剤透過時間が示されています。

溶剤種透過時間
メタノール 99.9%54分
エタノール 100%154分
イソプロパノール 100%480分
耐薬・耐溶剤手袋 NEO NITRILEの耐溶剤性の例
(※2024年6月時点のデータ、最新情報は公式サイトをご確認下さい。)

この手袋ですとメタノールに手袋が常に接触するような作業ですと54分で手袋が使い物にならなくなることがわかります。もしメタノールでの洗浄作業などで手袋に常にメタノールが付着する状態であれば、30分とか45分に1回は手袋を交換しなければならなくなります。

そんなに手袋を交換すると作業効率が悪いといったことがある場合は他の手袋に変えるか、溶剤をメタノールからイソプロパノールに変えるという手があります。溶剤をイソプロパノールに変えるとこの手袋では480分つまり8時間はイソプロパノールが手袋に付着した状態でも大丈夫ということになるので、7.5時間程度で手袋を交換すればいいことになります。もちろん、溶剤を変更するとそもそも目的の洗浄なり塗工なりが時間がかかるようになったりするので、慎重に判断する必要はあります。

耐溶剤性が最も優れた手袋が品切れに

いちいち、作業ごとに使い捨て保護手袋が適切なものかどうか判断するのが面倒という人も多いかと思います。そんな人にお勧めなのが9割の溶剤で透過時間が480分という優れた耐溶剤性を示す手袋「ALPHATEC® 02-100」(Ansell社製)です。こちらの手袋はジクロロメタンやクロロホルム、アンモニアなどといった一部の強力な溶剤を除き9割の溶剤で透過時間が480分以上となっています。そのためこの手袋であればほとんどのケースで7.5時間に1回交換で大丈夫です。(もちろん、自社使用の溶剤で透過時間が何分となっているか確認はしてください)

また、Ansell社サポートも充実しており、使用している溶剤の名前とcas番号を伝えればAnsell社独自ツールで透過時間の予測値を教えてくれます。もちろん、こちらは問い合わせて数日で返答がくるようなものではありませんが、こういったサポートをしてくれる手袋メーカーは中々ないのでとてもありがたいです。

優れた耐溶剤性手袋02-100は品切れに

話が長くなりましたが、要するに溶剤に長時間触れるような作業をするのであれば「アルファテック 02-100」という手袋がお勧めなのですが、皆さん同じことを考えているのか2024年6月現在品切れ中です。いつ入荷するか未定だそうです。早く増産して欲しいものですね。

↑2024年6月現在、在庫がない状態のアルファテック02-100シリーズ

耐溶剤性手袋02-100で480分以上の溶剤

「アルファテック 02-100」で透過時間が480分以上の溶剤が具体的にどんなものがあるか知りたい方もいると思いまして、代表的なものを箇条書きにしてみました。

  • アセトン
  • アセトニトリル
  • 二硫化炭素
  • ジエチルアミン
  • 酢酸エチル
  • n-ヘキサン(ノルマルヘキサン)
  • メタノール
  • 水酸化ナトリウム(100%も40%水溶液も480分以上)
  • 硫酸
  • トルエン
  • 塩素
    (塩素は480分以上となっていますが、塩化水素は120分以上となっており塩素系でも化合物によって得手不得手があるようなので、ご注意ください。)

参考資料

アズワン公式サイト

株式会社 重松製作所 化学防護手袋カタログ

chemistry保護手袋,溶剤

Posted by Nao